※※※になったアタシ。/ただのショートではない。
ベテラン刑事の渡辺さんが第一発見者の若い女性から事情を訊いていた。
そこは古い雑居ビルの外階段の踊り場。
もう夕方も終わろとしていて、暗くなってきていた。
若い女性は少し戸惑った様子で状況を説明していた。
話しは複雑だった。
顔見知りの上の階の美容師の男から「外で話したい。先に行っててくれ」と言われて先に向かったらその男が外階段で死んでいた、と話していたのだ。
発見した時のことを思い出したのだろう。
若い女性は手で顔を覆いながら涙を流しはじめた。
遺体は酷い状態だった。
必要以上に何十ヵ所も刺されていたし、口の中には被害者の薬指が切られて押し込まれていた。
薬指の指輪は黒い血の中で輝いて見えた。
既婚者同士の交際だったようだ・・・。
渡辺さんはわかりました、という感じで頷いていた。
手のこんだ殺人事件だった。
わざわざ殺された被害者に変装して、交際相手に発見させるなんて異常だと僕は思った。
「行こうか?」
先輩刑事の飯島さんに言われて僕は一緒に下の駐車場に向かった。
舗装されていない砂利だらけの駐車場に僕と飯島さんはいた。
雑居ビルの真横にある駐車場からは、階段がよく見える。
先ほどまでいたたくさんの人はもういない。
今は渡辺さんだけだ。
素敵だな、と思った。
たたずまいからして、その辺の刑事とは違う。
あの人こそが僕の認める刑事だ。
背の高い、気難しい顔をした初老の男はその地域では伝説的な刑事だった。
「俺の首の後ろを見てくれないか?」
飯島さんに言われて見てあげた。
「何にもないですよ?」
そういう僕をしっかりと見ていたのがわかった。
鋭い視線が階段から向けられている。
もう夜だ。
暗くて表情なんてわからない。
でも、わかる。
あの人の視線を感じるんだ。
ああ、やっぱり渡辺さんは最高だな、と思った。
前回ホテルで殺害したアバズレ主婦の遺体に書かれた首の後ろのホクロに気づいてくれていたのだ。
そして、今回の男の遺体にもあるホクロにも気づいたのだ。
あなたの首の後ろにあるそのホクロを真似して書いたんだよ?て言いたくなった。
殺されても仕方がないクズは必ずいる。
みんな僕が裁いてやる。
これは僕からあなたへの挑戦状。
階段のあの人がこっちを見ている。
見下すような哀れむ目。
僕は、なんだろう?という表情を演じた。
微笑みそうになるのを必死にこらえながら。
了。
・・・夢を見た。
夢の中で私は新米刑事でありながら、連続殺人鬼だった。
憧れる刑事さんへ挑戦するように人を殺害する異常者だった。
本当は伝説の刑事さんに視線を向けられた瞬間に怖くなって目が覚めてしまった。
起きてから、なんか、ショート(小説)として書けそうな夢だったから、とりあえず書いてみた。
でも、実際には交際している女性を騙すような変装なんて、アニメや映画の世界でしか不可能だと思った。
これはムチャ設定。
でも、こういう映画がすごい好き。
夢の中の雰囲気が映画の『セブン/seven』や『羊たちの沈黙』みたいな雰囲気で私の夢らしいな、と思った。
でも、こういう夢を見るのも、見た夢を、ショートにしてブログに書くのも恥ずかしいから、次からはやめようと思ったアタシでした。笑
最後まで読んでくださり、ありがとうございましたm(__)m。
またね^^