アタシの国から引っ越したアミちゃん。
閲覧注意のお話です。暗い話が苦手な人は読まないでください。
前々回書いた『何をしても許されるアタシの国』のつづきになります。
前々回読んでない人はフォルダの『アタシの国』から探して読んでください。
・・・URLの貼り方がよくわからないのでごめんなさい。
雨が降ると潮のにおいがすごかった。
アパートの裏は道路はさんで海だった。
最初、すごい景色がよくてよろこんだけど、海のせいでイロイロな物がサビることに気づいてから最悪だと思うようになった。
引っ越したばかりの頃は裏のベランダの手すりは白いペンキを塗ったばかりでキレイだったけど、しばらくするとペンキが剥がれてサビだらけになってしまった。
それ見て、ヤバいと気づいた。
アタシの大切な自転車がサビちゃう、てあわてた。
自転車は離婚して離ればなれになってしまったお父さんからのプレゼントで、ぜったいサビさせたくなかったから、それまで外にフツーに置いていたけど、自分の部屋にしまうようにした。
その時、お母さんから『なんで自転車家の中に入れるのよ』てすごい怒られた記憶がある。
ちゃんとサビちゃうからって説明しているのに、ぜんぜん理解しようとしないで怒鳴られり、叩かれたりしたから、復讐を何度もちかった。
アミちゃんに自転車を家の中にしまっていることを話したら『盗む人が多いからそれが正解だよ』て言われた。
盗む人はたしかに多かった。
ハトおじさんが死んで、遠い親戚の人がきて、荷物の整理をしたんだけど、家具とかをアパートのまえに置いていたら、けっこう盗まれたとか話しているのがきこえた。
私は、魔女おばさんがソファーを運んでいるのを見た。
でも、すぐに戻しにきていた。
やっぱり悪いと思ったからだと思ったけど、そうじゃなくてソファーがすごい臭かったから耐えられなかったみたいだった。
・・・ハトおじさんは孤独死してすごい腐っていたから、においとかヤバかった。
ハトおじさんの家のまえとかクリーニング屋さんが部屋をクリーニングしても、フツーに臭いままで、よく見るとドアのすきまとか壁のひび割れのすきまとかにウジ虫がいて気持ち悪かった。
外から見て気づいたけど、ハトおじさんの家の窓とか全開にしてあった。
きっと何をしてもにおいがとれないんだと思った。
だからだと思うけど、私が引っ越すまでの間、ハトおじさんの住んでたその臭い部屋は誰も引っ越してこなかった・・・。
アミちゃんが引っ越す話をしたのは、ハトおじさんが孤独死してから、すぐだった。
もうすぐ出産予定日で、生まれたら抱っこさせてくれる約束だったから、けっこうガッカリした。
でも、ここに住んでいる人たちは複雑な事情で住んでいる人ばかりだったから、引っ越すことにも複雑な事情があるんだと思った。
だから『元気でね?』
て
言われて
『うん』
て
返事しておしまいだった。
『どうして引っ越すの?』とか『どこに引っ越すの?』とかイロイロきいたほうがよかったのかもしれないけど、私はその時、パソコンを使った事件に巻きこまれていて、すごい頭がおかしくなっていたから、そこまで考えられなかった。
もし、考えられていたとしても、結果的にきっと、何もかわらなかったんだと思う・・・。
アミちゃんは遠い場所に引っ越すって言っていた。
それがどこなのか何も言わなかったのは、アミちゃんにもそれがどこにあるのかわからなかったからかもしれない・・・
私が家に帰らない日が何度かあって、何度目かの日に、アミちゃんが引っ越したのをお母さんからきいた。
アミちゃんは、私たちが住むアパートから少しはなれた別のアパートの屋上から飛び降り自殺して、赤ちゃんと一緒に天国へ出発した。
朝、お風呂でシャワー浴びながらそれきいても、その時のアタシは『そうなんだ』くらいの感想しかもたなかった。
その時のアタシは、自分のした失敗が大きすぎて、くやしくて泣いていた。
アミちゃんとか、どおでもよかった。
・・・その時の失敗というか事件は、私の人生の中で一番になる《最悪の出来事》だった。
つづく。