深海を歩くアタシ。
たまに、理由もなく私は深海を歩きだす。
何か理由があって歩きだすわけではないし、準備して歩きだすわけでもないんです。
それは突然にはじまります。
気づいたら暗闇にいて、私は深海を歩いているんです。
そこは無音で私以外は誰もいません。
深海なので誰の声もとどきません。
理由もわからず歩きつづけるんです。
疲れることもないし、何かを感じることもなくて、ただボンヤリと歩いていくんです。
深海の闇はとても深くて右も左もわかりません。
上も下もわかりません。
本当に私なのか、それすらもわからなくなります。
もしかしたら、いれかわった誰かが私のふりをして歩いているのかもしれません。
もしかしたら、私ではなくてあなたが歩いているのを勘違いしているのかもしれません。
それは突然にはじまって、突然に終わります。
終わったあと、私はそれまでの記憶はまったくなくて、自分がどこにいるのかもわかりません。
時間だけは正確にたっていて、それ以外のことはぜんぶ不安定です。
頭もボンヤリしているし、ズキズキ痛みます。
最悪の状況です。
なのに、しばらくすると、私は深海をふたたび歩いています。
理由もわからず、突然に。
深海を歩きはじめたのはずっとずっと昔。
まだ、小学校にあがる前。
どうして深海を歩きはじめたのかわかりません。
・・・。
少しまえ、深海からもどってきました。
まだ、この世界になれてなくて、あいかわらず最悪です。
頭もズキズキするし、ボンヤリします。
でも、ここにいるよりは深海のほうがマシかもしれない。
だって、この世界とか汚いし、大キライだから。