キベさんとの正しくない出会い・・・。
※閲覧注意のお話です。暗い話が苦手な人は読まないでください。
前々回の『意味不明なブタおばさんとのすごい長い道のり。』のつづきになります。
『今日からここがあなたのおうちだよ』
て
連れてこられたのは二階の角部屋だった。
ベッドが2つあって、ベッドとベッドのあいだに小さくてまるいテーブルがあった。
テレビのかわりにラジカセがあって、なんか、知らない音楽が流れていた。
『キベさん、今、事務所に行ってるみたいだから待っててね』
て
いって、ブタおばさんたちは、どこかへ行ってしまった。
部屋の作りは、ほとんどアパートみたいな作りで、小さいキッチンには古くて小さな冷蔵庫があった。
冷蔵庫の中とか見たら、手作りのプリンがあったから、とりあえず遠慮とかしないで、子どもらしく食べはじめた。
私は、真ん中にあるテーブルのところでプリン食べながら、部屋の中をキョロキョロ見ていた。
なんか、全体的に古い物ばっかだったけど、うちの家とかとちがって、すごいキレイにしているのがわかった。
でも、アタシが楽しめそうな、お菓子とかかわいい猫とかはいなかったから、それはガッカリだった。
廊下と反対側にある窓のところに、本だながあって、たくさん本がおいてあった。
でも、本とかキライだから見たくもなかった。
本だなの上には花びんと一緒に正方形の形した不思議な立体のパズル(?)みたいなのがあった。
オモチャ(?)みたいだったけど、アタシははじめて見るオモチャだったから、どうやって遊ぶのかサッパリだった。
だから、とりあえず手にとって、パズルのところを指でおしてみたりしたけど、なにも変わらなかった。
そんな感じでオモチャいじっていたら、キベさんがきた。
『それ、ルービックキューブ』
『えっ?』
て
ふりかえったら、知らないおばさんがドアのところに立って、微笑んでいた。
背の高い、いかにも『良いお母さん』みたいな雰囲気の人だと思った。
私のお母さんくらいの歳かな?
て、思った(あとできいたら、お母さんと同い年だった)。
『それ、好き?』
『とくに好きでもキライでもないよ?』
私がそういうと近づいてきたから、私はキベさんにルービックなんとかをわたした。
キベさんは、なんか、楽しそうにルービックなんとかをカチャカチャやりはじめて、あっという間に一面をそろえた。
てっきり、ぜんぶバラバラにはずしていくオモチャだとおもっていたから、けっこうビックリした。
『やってみる?』
て
言われたからやってみたけど、ぜんぜんできなくて、これはアタシには似合わないと思った。
でも、まったくできないとか、くやしいから、けっこう頑張ってガチャガチャやってみた。
だけど、ぜんぜんそろわなかった・・・
『楽しい?』
『ぜんぜん楽しくないし。』
私がそう言ってキベさんのほうを見ると、キベさんは、また微笑んで『そっか』とか言って、また微笑んだ。
とにかく、よく微笑む人だと思った。
・・・あとから、キベさんの過去を知って思ったことは、アタシをキベさんと一緒の部屋にしたのはヒドイことだと思った。
私がキベさんだったら、ぜったい辛いし、イヤだったと思う。
でも、今になって思い出すキベさんは、最初のルービックなんとかの時の微笑んでいたキベさんで、ぜんぜん辛そうな顔とかしてなかったから、すごい不思議。
私にはよくわかんないけど、私をキベさんと同じ部屋にしたのは、キベさんにとってはまちがいだったけど、私にとっては正しかったのかな?
て
思ってみたりしている。
つづく。