新しいミスミさんとアタシ。
※閲覧注意のお話です。暗い話が苦手な人は読まないでください。
前回の『学校みたいな施設に行ったアタシ。』のつづきになります。
壇上にあがったミスミさんは、いろんなむずかしい話をはじめた。
『海の中で手紙を書くように生活して・・・』とか、複雑なたとえ(?)があったけど、アタシはかなり頭がよかったからフツーに言葉の意味とかすごい理解していた。
大ホールは、たぶん、100人くらい入れるスペースで、そこにおばさんとかおばあちゃんがいっぱい集まって、ミスミさんが話すたびにうなずきながら、メモとかとっていた。
なんか、まわりにある他の建物からも集まってきていて、後ろのほうとか、立ってみてる人とかもいた。
アタシはけっこうまえのほうで座って話とかきけたから、よかったと思った。
それで、最初、あんま気にしてなかったんだけど、途中でミスミさんがアタシの知ってるミスミさんじゃないことに気がついた。
アタシの知ってるミスミさんは、太ったおばさんとお姉さんの中間くらいの年齢の人で、髪の毛とか腰くらいまでのばしていた。
だけど、今、目の前にいるミスミさんは、やせていたし、髪も歯だけおじさんみたいに刈り上げていたし、年齢もおばあちゃんとおばさんの中間くらいの人だった。
でも、配られた教科書(?)には《ミスミなんとかのタコウ会(?)》とか書かれていたから、名前的にはミスミさん本人だった。
だけど、アタシの知ってるミスミさんとは、やっぱりぜんぜんちがったから『新しいミスミさん』だと思った。
それで、新しいミスミさんは、けっこうたとえ話とか使って長いこと話していた。
たぶん、二時間くらい話していた。
私は、あんま長い話とか好きじゃないから、チョコとか食べながらいろんなことを考えていた。
アミちゃんが赤ちゃんと一緒に天国に行ったのはどうしてだろう?とかパソコン事件のこととか、けっこう真剣に考えていたら、いつのまに眠っていたみたいで、気づいたらみんなが立ち上がって歌とか歌いはじめていたから、けっこうビックリした。
家族は一つとか幸せはまるいとか土の上に空とか、よくわかんない歌詞だったけど、とりあえずおばあちゃんとかおばさんがすごい頑張って歌っていたから、アタシも一緒に立ち上がって歌っているフリをしてあげた。
終わったあと、大ホールからでて廊下で待っていたら、ミスミさんが何人かのおばさんとでてきた。
おばさんたちは、よくみたらさっきみた独り言おばさんとそっくりなトンガリ帽子かぶってた。
なんか、変な帽子が流行っていることにビックリしていたら
『カワセさんのところのお嬢ちゃん?』
て
いきなり新しいミスミさんに話しかけられたからさらにビックリした。
新しいミスミさんとか、一度も話したことがなかったのに、なんでアタシのこと知ってるの?
て
すごい不思議だった。
でも、あんまむずかしく考えると疲れちゃうから、すぐに忘れるようにして
『うん。遊びにきたよ?』
て
フツーに返事したら、なんか、新しいミスミさんが、逆にビックリした感じで
『あれ、お母さんは一緒じゃないの?』
とか、言われたから、今までの困難な道のりとかを説明してあげた。
それで、たしか、ミスミさんが『お母さんに電話して、状況を説明してあげる』とか言いだした。
はっきり言ってお母さんとかめんどくさい存在だったし、友達の家にいないことがバレたらヤバいと思っていたから止めたんだけど、けっきょく電話された・・・
そこで、私は新しいミスミさんがすごい人かもしれないと思った。
ぜったいふだんのお母さんなら怒って大変なのに、その時、ミスミさんからかわってもらった電話で話したお母さんはぜんぜん怒ってなくて、むしろ優しかった。
それから意味不明だったけど『ゆっくり勉強してきてね』とか言われた。
なんか、あとから知ったんだけど、新しいミスミさんがお母さんに『しばらくこちらの施設に泊めて、私がそちらに戻る時に一緒に帰ります(?)』とか言ってたみたいで、お母さんから『迷惑かけちゃダメよ?』
とかも言われた。
たしか、そんな感じで、私は新しいミスミさんに言われるまま、そこの学校みたいな施設でしばらく生活することになった・・・
つづく。